筆者のアツい思いと切れ味の悪さにより思いのほか長くなっているので、ここまでの話を整理しよう。
一般に製品ライフサイクルの中で導入時は統合型であり徐々にモジュール型に移行する。モジュール型であっても内部に統合された部分が存在し、その部分的統合も徐々に移動する。部分的統合が行われるのは、ユーザが機能的に「不十分」と感じる部分と、インターフェースの固定化が不完全な部分である(*1)。
パーソナルコンピュータの世界ではIBM-PC互換機がモジュール化し、モジュールレベルでの飛躍的な性能アップが進んだ。だがモジュールレベルの性能アップがモジュール化の絶対的な優位を意味するわけではない。変化が激しい環境では製品アーキテクチャがボトルネックになるからモジュール型より統合型が優位な場合もある。
通常であれば各モジュールが大幅に性能向上を実現し続ければPCアーキテクチャが「速度」「容量」のボトルネックになるところ、そして実際にボトルネックになったのであるが、インテルが中心となってPCアーキテクチャをバージョンアップし、マイクロソフトが中心となって相互運用性と互換性を維持したため、PCは長期にわたってITの中心機器であり続けた(*2)。このモジュール型の弱点を何回も克服した点がPCの歩みの特異な点だと言えるだろう。
PCでは明確で固定されたインターフェースで区切られた先のモジュールレベルでは激しい競争が行われ急速な性能向上を実現する一方、インテルとマイクロソフトが統合型の特徴であるアーキテクチャのボトルネック解消や基本信頼性を請負っていた。即ちモジュール型と統合型の良いところを取り入れるハイブリッド型とでも呼ぶべき形態であった。
これに単純統合型で対抗したアップルは1990年代後半に苦境に陥った。
これが1980年代から1990年代後半にかけての物語。
では2011年現在、アップルが統合型で絶好調なのはなぜか。これが次の問題。
(*1) 厳密に言えば、後者はモジュール化の定義から当然に導かれる。統合型からモジュール型へ移行する条件の一つがインターフェースの固定だからである。
(*2) 別な言い方をすれば、ユーザが相互運用性と互換性を強く要求したために、断絶的な変化による性能ジャンプアップよりも、PCアーキテクチャー維持による漸進的な性能アップが選ばれた
ここまでは大納得です。やはり山場は「なぜipodから統合型に再度変わってきたか」ですね。楽しみに待っています。
返信削除田中辰雄です。twitterで導かれてここに来ました。
返信削除たいへん面白く読ませてもらいました。
makoto0119さんと同じく、アップルの復活をどうとらえるかが鍵になると思います。
クリスチャンセン説をとると、基本はモジュール型で一部に再統合が起きるだけなので、iPhone,iPadも・・・というかスマフォとタブレットPCもいずれはモジュール化されるということになるでしょう。アップルがウインドウPCに押されていったという流れが繰り返されるというパターンです。実際、そのような予想を立てる人もいます。
一方、私の技術革新サイクル説をとると統合への回帰は長期趨勢なので、iPhone,iPadはそのままで、より一層の統合化すら進展しうることになります。
これを判断する上での注目点はスマフォの動向で、アンドロイドがどうなっていくかがリトマス試験紙になるように思います。現状のアンドロイドスマフォはアプリの自由度が高い点でiPhoneよりもPCに近く、いわばよりモジュール化されています。しかし、キャリアは自分のところでカスタマイズしたアンドロイドスマフォ、いわば統合されたスマフォも出してくるでしょう(ガラケー的なスマフォ、ガラケロイド)。どちらがユーザに支持されるかで将来が占えるように思います。
以上コメントまで