実はファイン(1999)は、1990年代後半、パーソナルコンピュータの分野で統合型のアップルがモジュール型のPC(いわゆるIBM互換機)に敗退したことに言及している。ちょっと長くなるが引用してみよう。
「同社のマッキントッシュはパソコン業界で技術的に傑出した製品になっていた。しかし、アップルコンピュータは、マッキントッシュの主な優位性がハードとソフトのパッケージではなく、OSにあることを自覚していなかった。その結果、同社はその傑出したOSを低品質のハードウェアと一括して垂直/統合構造に組み込んでしまったのだ。一方、IBM互換機を選んだパソコン・メーカーの場合は、サブシステムがそれぞれの分野で厳しい市場競争で優位に立つことによってアップルコンピュータを追い抜いた。結局、マッキントッシュOSはハードウェアが足かせとなり、モジュール化の進展とパソコン市場の競争激化に対応できなかったのである。(*1)」
そしてファインはアップルがモジュール化を受け入れOSとソフトウェアに特化していれば競争に勝っていたかもしれない、と指摘している。
ここでアップルあるいはスティーブ・ジョブズに詳しい人ならパソコンの父、アラン・ケイの
"People who are really serious about software should make their own hardware."
「ソフトウェアを真剣に考えるなら、それに合わせたハードウェアを作るべきだ」
を思い出すかも知れない(*2)。
目指す使い勝手を実現するには一社が統合的に手がけるべき、ということだろう。これもまた一般論としてうなずける。そして実際にアップルはファインの忠告にもかかわらず(?)、現在もこの方針を堅持しているのだ。
激しい技術革新を取り入れるならモジュール化。ソフトを「真剣に」活かすなら統合。
1990年代後半に統合で失敗し、2011年現在統合で大成功しているアップル。
謎は深まるばかり。
(*1) ファイン(1999) P74
(*2) スティーブ・ジョブズがMacWorld 2007で引用
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