2012年2月22日水曜日

ソーシャルゲームのアイテム課金、ガチャ規制(その3)

注目を集めているトピックを扱ったせいか、当シリーズは多くの方にご訪問いただき小心者の筆者は恐縮している一方で、せっかくなので2月6日のエントリ「ソーシャルゲームのアイテム課金、ガチャ規制の予備的考察」(以下「予備的考察」)について、少し補足をしておきたい。

<風俗営業法と賭博>
「予備的考察」で、ガチャ等が射幸心を煽るのであれば風俗営業法の適用も視野に、と書いた。
これは一見すると新たな規制をソーシャルゲーム(のガチャ)に課すように思われるかもしれないが、真意はそこではない。

繰り返すが我が国で賭博は違法。射幸心を煽ってはいけないのである。射幸心を煽ってはいけないんだけど、まぁある程度以下ならね、ということで風俗営業法の規制の範囲内であれば営業が認めれられている。要するに、パチンコやパチスロは風俗営業法に従うことによって賭博罪の適用を回避しているわけだ。ちなみに宝くじや競馬等の公営ギャンブルはすべて特別法を根拠法に持つことで合法化されている。

では、風俗営業法の適用外で射幸心を煽ってしまったらどうなるか? もちろん違法である。賭博を行った者も、賭博サービスを提供した方も罪に問われる。ということは、風俗営業法(または特別法)の適用がないソーシャルゲームのガチャが【仮に】射幸心を煽る、即ち賭博とみなされた場合には。。。以下省略(小心者につき)。

なので射幸心を煽る恐れがあるとすれば、風俗営業法等の規制に従う方がむしろ業界とユーザのため、という考え方もあろう。

<課金アイテムと返品>
「予備的考察」で課金アイテムの購入は通信販売の返品にかかる規制が適用されると指摘した。これも話せば長いテクニカルな論点を含むお話。
特定商取引法上の返品権が認められるのは「商品」及び「指定権利」の返品であり、役務提供契約については認められていない。これは、役務は一般的には返品が考えられないため (経済産業省 「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」 ,以下「準則」)
要するに「役務」には返品に関する同法上の規定が適用されない。ではソーシャルゲームの課金アイテムは「商品」か「指定権利」か「役務」か。

前回も取り上げた、消費者庁インターネット消費者取引連絡会第4回会合の資料に、
オンラインゲームの利用規約によっては、ユーザはゲーム内のアイテム等について”利用権”を有するのみで、”所有権”等の権利を有していない、利用資格を喪失場合は未使用分のコインは消滅する、当社が受領した料金等の払い戻しは一切行わない、と記載されていることもある(資料2-1「オンラインゲームによる相談事例」)
との記述がある。課金アイテムは”利用権”なんだから「商品」か「指定権利」に該当するもので、少なくとも「役務」ではなさそう。そうであれば返品に係る規制が適用される。

ところで同じインターネット消費者取引連絡会第4回会合の資料には気になる記載がある。ゲーム上の財産(アイテムや通貨)について、
※運営側の見解では、「財ではなく運営会社が所有するデータの使用許諾(役務提供)に過ぎない」(資料1「オンラインゲームの消費者トラブルについて」)
という。
ん? 使用許諾(役務提供)? ゲーム運営会社が許諾してプレイヤーが使用するのに「役務提供」って不自然では? 役務提供というのはこのコンテキストでは通常ゲーム運営会社が何らかの行為を行うことであって、ユーザがアイテム使用という行為を行う場合には当てはまらない気がする。
そしてこの何気ない記載が、
ソーシャルゲームにおける課金アイテム購入は「役務」の提供ですから返品規定は適用されませんよ!
というゲーム運営会社の周到な布石なのかもしれないと疑ってしまう自分はもう大人になり過ぎてしまったのかもしれないという自己批判とそんな布石を論破する思考実験との間で揺れ動く今日この頃なのであります。


<disclaimer>
いつもどおり考えながら調べながらの予備的メモですので、お気づきの点等がありましたら優しくご教示いただきますようお願いします。

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