2012年2月6日月曜日

ソーシャルゲームのアイテム課金、ガチャ規制についての予備的考察

前回のエントリ「ステマ、サクラ規制に関する簡単な日米対比考察」に続いて、ソーシャルゲームにおけるアイテム課金といわゆるガチャについて考える。
<参考>
・2012年1月25日付 日経記事「ソーシャルゲームが抱える潜在リスク 「射幸心」あおる仕組みとは」(以下「日経記事」)
消費者庁「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」(以下「留意事項)は、口コミだけでなく、無料ゲームのアイテム課金の問題もフリーミアム類型として取り上げており、景品表示法上では「無料で利用できるサービスの具体的内容・範囲を正確かつ明瞭に表示」すれば問題ないとしている。

うーむ、それはそうなんだが。。。またしても違和感を感じてしまう。

アイテム課金の問題はユーザの十分な自覚なしに後からゲームで数万円、数十万円の請求をされたり、その中に未成年が含まれている場合だろう。これは購入意思決定の問題。さらに「日経記事」でも指摘されているように、この消費者庁「留意事項」はガチャに触れていない。こちらは購入意思決定の問題に加えて射幸性の問題。

<購入の意思決定>
人間は心の生き物であるからして、どこで、どんな状況でその買い物を決めたか、というのはとても重要である。意思主義なのである。だから法はクーリングオフの制度を定め、自発的意思でじっくり考えたのではない購入、例えば販売業者が自宅に押しかけてきた場合や、街を歩いていてキレイなお姉さんに誘われるままに素敵な絵画を買ってしまった場合などには一定の期間内に解約できることになっている。

この考え方を適用すれば、多額の支出の自覚なしに遊んだ後で数万円数十万円の請求が届いたり、未成年(またはその親)が高額な支払いを余儀なくされる問題があるなら、「じっくり考えて自発的に意思決定した」というプロセスが必要であるし、そうでない場合、特にゲーム提供者側にその非がある場合にはクーリングオフの適用も考えられるだろう(もちろんクーリングオフを推奨するのではなく、購入者が冷静に考えるプロセスを用意すべきという趣旨であります)。

ところでソーシャルゲームの課金アイテムは通常返品キャンセルが不可であろう。だとすれば課金アイテム購入は通信販売に当るから、返品に関する定めは見やすい箇所に表示するだけでなく、購入申込画面にも記載しなければならない(特定商取引法第15条の2第1項、特定商取引法施行規則第9条第3項、通信販売における返品特約の表示についてのガイドライン)。

要するに、課金アイテムを購入するたびに最終申込画面に明瞭に「キャンセル不可ですよ」と表示するか、さもなければ8日以内に返品可能だということになる。筆者は自分でこういったゲームを遊んだことがないので実際の表示がどうなってるかわかない。経験者の皆様よりご教示いただけると幸いであります。

<射幸性>
ガチャ。
スロットマシーンのようなもので結果により得られるアイテムの価値が大きく異なるなら、射幸心を煽ると考える余地は大きいだろう。そもそも高額な賞品を提供して射幸心を煽るのは賭博罪で違法(刑法第185条)。賞品が「一時の娯楽に供する」ならこの限りではないが、ガチャで得られた賞品がネットオークション等で数万円で取引されていたり、またその賞品欲しさにガチャで何万円も使ってしまうなら、ちょっと一時の娯楽に供するものというのは難しい気がする。

射幸心を煽る恐れがあるならパチンコやゲームセンターがそうであるように風俗営業法の適用も視野に入る(風俗営業法7号営業、8号営業)。仮にそうなるとこうしたゲームの提供には風俗営業法上の許可が必要になったり、未成年遊戯の可否、あるいは営業時間の制限等がかる。
もちろん現行風俗営業法は店舗営業が対象だけれど、法の趣旨に鑑みればネットへの対応も必要に応じて考慮する必要があろう。風俗営業法の目的の一つは「青少年の健全な育成」である。

さらに、ガチャもまたアイテム購入と考えれば、先に指摘した特定商取引法の返品に関する表示が必要。即ち、何回もチャレンジする場合には毎回表示される最終申込画面に「キャンセルできませんよ」という表示が明瞭に表示されることになる(そうでなければ事後でキャンセル可)。

<まとめ>
どうなんだろう? と思って自分で調べた備忘録を兼ねたpreliminaryな考察なので、ご指摘事項等ありましたらお知らせいただけるとうれしいです。突然の攻撃はご遠慮願います。羊のように小心者ですので。


<おまけ>
ネット先進国のお隣韓国では、ネット上のゲームに関する厳しい規制が導入されており、射幸性の強いゲームも禁止されていると聞く。ご存知の方がおられましたらご教示をお願いする次第であります。

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