2011年5月11日水曜日

統合化とモジュール化 日本のケータイ2 ガラパゴス

ガラケー(ガラパゴス・ケータイ)は日本のケータイを卑下した言い方だ、という指摘をネットで見かけた。まぁ確かにそうかもしれないが、よく考えてみるとそれってガラパゴス諸島の動物たちに失礼じゃないだろうか。
ガラパゴス諸島の動物たちが独自の進化を遂げた点に注目しダーウィンは進化論のヒントを得たという。「進化」は環境適応であって「進歩」ではないから、異なる環境に適応した生物との間に優劣はないし、ある環境に適応した生物が他の環境では優位性を発揮できないのは皆同じ。だから本来はガラパゴスの語自体に優越も劣等もないはずだ。それなのにガラケーという言葉にマイナスのニュアンスがあるならそれは「ガラパゴス・ケータイ」のガラパゴスではなくケータイの方に問題があるということだ。

ガラパゴス化「周囲とは懸け離れた、独自の進化をすること。特に、IT技術やインフラサービスなどが国際規格とは違う方向で発達すること。日本の携帯電話など、高度で多機能であるが特殊化されていて世界市場では売りにくいものについていう」(デジタル大辞泉)
電子辞書に載っている上に、ずばり携帯電話が例として取り上げられており話が早い。

日本はケータイ先進国であり、2000年から2008年にかけて毎年4000万台から5000万台の国内出荷を記録した(1)13千万人弱の日本の総人口に対して毎年40005000万台を出荷し続ければ一台目需要が一巡して買換需要がメインになり、やがて買換需要も頭打ちを迎えるのは明らかだ。販売奨励金の停止もあり2009年の国内出荷は3100万台と大きく落ち込んだ。国内市場がダメなら海外に活路を見出したい国内メーカだが、残念ながらうまくいっていない。この厳しい状況を反映して携帯電話メーカーには再編の嵐が吹き荒れ、2000年代前半には日本市場に11社(ロンドンに本社があるソニー・エリクソンを含む)がひしめいていたのが2011年春には6社に減少している(2)

ところが世界では2010年に前年比31.8%増の16億台の携帯電話が販売されたという。最も進んでいると自負してきた日本の携帯電話は完全に取り残された。
冒頭で指摘したように日本という独自の環境に適応して「高度に発達した」ガラケーが海外という異なる環境で売れなくても、それ自体は責められない。海外はシンプル志向なので高機能・多機能な日本製品は売れないという(辞書にも載っているくらいの)定番の理由がある。

だが2007年にアメリカで発売されたiPhoneに続きアンドロイド機が各メーカーからリリースされ先進国を中心にスマートフォンブームが巻き起こっている。同じネット接続を前提とした高機能・多機能携帯電話のスマートフォンが日本でも急速に販売を伸ばし始めると、ガラケーが売れない理由を国内市場飽和と海外のシンプル志向に求める言い訳が、両方とも通用しなくなってしまった。
ガラケーことガラパゴス・ケータイが揶揄される所以がここにある。やっぱり悪い(?)のはガラパゴスではなくてケータイだったのだ。

というわけで以前のエントリ「統合化とモジュール化 日本のケータイ」と同じ疑問に行きつく。
「アメリカでアップルによってネット携帯電話の「ニワトリ・卵」が解決され、ひとたびネット携帯電話のエコシステムが定着すれば、日本のガラケーもスマートフォン同様に売れるはずであるが、2011年春時点では日米ともにスマートフォンの勢いが圧倒的である。それはなぜか。」


(1) 電子情報技術産業協会(JEITA
(2) 三菱電機が撤退(2008),三洋が京セラに売却(2008),カシオと日立(2004)NEC(2010)がNECカシオ モバイルコミュニケーションズ設立,富士通と東芝が富士通東芝モバイルコミュニケーションズ設立(2010)

0 件のコメント:

コメントを投稿