2011年12月5日月曜日

オリンパス騒動 臨時株主総会?

川井先生がブログ「ウッドフォード氏、取締役辞任。委任状争奪戦へ?」でウ氏がオ社臨時株主総会開催を請求した場合のシナリオについて検討しているのを読んで、実務面でちょっと気になった点があるので派生記事(?)を書かせていただこう。

筆者の私見ではウ氏の狙いは現経営陣に揺さぶりをかけて自発的な辞職および臨時株主総会での新経営陣選任を迫るもので、実際に自ら臨時株主総会を請求する可能性はゼロではないにせよ、高くないと思っている。委任状争奪戦、いわゆるプロキシファイトについても同様。ついでに言えば、「自分以外の取締役はクロだから全員辞職せよ、ただし私は社長に戻る」というウ氏の主張はあまり説得力がなく上手な戦い方とは思えない。

ところで会社法297条はある条件を満たした大株主が臨時株主総会開催を請求し、会社がその請求から8週間以内の日を株主総会の日とする招集通知が発送しない場合には、裁判所の許可を得て自ら臨時株主総会を招集することができる、と定めている。これは臨時株主総会の開催には8週間もあれば十分、という認識が背景にあるのだろう。

臨時株主総会を開催するには以下の手順が必要である。
1) 取締役会で基準日設定
2) 官報・日刊新聞紙掲載申込、または電子公告の場合は電子公告調査機関への申込
3) 基準日公告(基準日の2週間以上前)
4) 基準日
5) 株主名簿の株主確定+発送準備(3~4週間)
6) 招集通知発送(臨時株主総会の2週間以上前)
7) 臨時株主総会

大株主から請求を受けたその日に取締役会を招集開催して基準日設定したとしても単純合計で7~8週間かかり、8週間以内に開催するのは難しい。しかも法に定める2週間前の招集通知発送では海外投資家の議決権行使が困難なため、特に外国人持株比率が高い会社は3週間前を目安に招集通知発送前倒しを心がけることを勘案すれば、会社法297条が要求する「請求から8週間以内を期日とする株主総会招集通知発送」は実現困難な規定といわざるを得ない。

念のためちょっと確認。
証券代行業務最大手の某信託銀行の担当者は匿名を条件に(笑)「確かに実際には難しいし、自分の知る限り上場会社が会社法297条の規定に基づき、大株主の請求から8週間以内に臨時株主総会を開催した例はない」とのこと。
四大法律事務所(最近は五大?)の弁護士先生は「仮に大株主がその点を理由として自らの招集を請求しても(早まるどころか余計に遅くなるので)裁判所が認めないだろう」、「公開会社を想定していない規定かもしれない」とのコメントでした。
ま、実務上はあまり問題にならないのかもしれませんね。

<オリンパス騒動へのインプリケーション>
ということで、もし可及的速やかに臨時株主総会を開催するとしても来年3月頃。新経営陣候補者を選ぶ時間を考えれば、またその前提となる経営刷新の方針が関係者に合意承認され、それが新経営陣候補者選定に反映されるべき点を考慮すれば、もう少し時間が必要だろう。そうなると臨時株主総会は4月、5月にずれていく。6月には定時株主総会があるわけだから、なにもその直前に拙速に臨時株主総会を開くことはあるまい、となるのが世の常、な気がする今日この頃なのである。

でわ。

※ 2011年12月6日 <オリンパス騒動へのインプリケーション>追加

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