2012年4月17日火曜日

ストックオプション担当者のユーウツ(住生活グループの事例)

※2012年4月23日 追記
なんと、発行中止を発表した同じ17日に改めて同内容で発行決議を取り直していました。
2012年4月17日付 ストックオプション(新株予約権)の発行に関するお知らせ
深まる謎に続編エントリで挑む!

---以下原文---

住生活グループ(5938)のストックオプション開示、怒涛の三連発。

2012年4月16日付 ストックオプション(新株予約権)の発行に関するお知らせ
2012年4月16日付 ストックオプション(新株予約権)の発行中止の可能性に関するお知らせ
2012年4月17日付 ストックオプション(新株予約権)の発行中止に関するお知らせ

いったい一晩の間に何が起こったのか、ことの次第を推測してみましょう。

「発行中止」開示によれば中止の理由は、
当社事務手続き上の不備により、関東財務局に提出すべき平成24 年4 月16 日付け有価証券届出書及び臨時報告書を提出することが出来なかった
とのこと。
臨時報告書は、当該ストックオプションの発行価額と行使価額の合計額の総額が1億円を超える場合に、取締役会決議があった際に提出が必要となる(金融商品取引法24条の5第4項、開示府令19条2項2号)。提出のタイミングは「遅滞なく」なので、取締役会決議があった当日の16日に間に合わなかったなら翌日に作成提出すれば良いですね。したがって臨時報告書は本件中止の決定的理由ではありません。

問題は有価証券届出書か。
ストックオプション発行は有価証券の募集に該当し、原則として有価証券届出書の提出が必要(金商法2条3項1号)。
 付与対象者が50名未満であれば例外扱いもあるのですが、「発行」開示によれば本件付与対象者は128であり50人を超えていますね。また、付与対象者が当該会社と完全子会社の役職員に限定されている場合も例外扱いですが(金商法4条1項1号、金商法施行令2条の12)、「発行」開示によれば割当対象者には、
(※2)本邦以外の地域において取得の申込みの勧誘がなされる新株予約権の割当ての対象となる者が11名含まれており、当該割当対象者に対する割当新株予約権数は2,500個であります。
だそうで、ここに完全子会社所属ではない役職員が含まれていたと思われます。

だとすれば有価証券届出書を急いで作成提出すれば良い、、、のですが。
有価証券届出書はほぼ有価証券報告書と同等の内容。作るのはタイヘンであります。さらに住生活グループは3月決算のようですから、関連部門はまさに決算作業の真っ最中。これから5月前半に決算役員会で決算承認、同日決算短信開示、それから有価証券報告書を作成して6月総会後にこれを提出、と怒涛のスケジュールですから、
「えーと、忘れてたんで有価証券届出書の作成提出よろ!」
なんて明るく言える状況じゃないわけですね。
そもそも有価証券届出書の効力発生は提出から15日経過後なので、本件5月9日の発行に間に合わせるためには4月23日までに作成提出しなきゃ、、、ってムリムリ。決算閉まってないし。

ということで本件ストックオプション付与中止は、
  • 付与対象者が50名を超え、
  • 完全子会社ではない会社の役職員を含み、
  • 有価証券届出書の例外規定に該当せず、提出が必要なことを失念し、
  • 気づいたものの、付与日に間に合うよう有価証券届出書を作成できない社内状況
という複合要因により引き起こされたものと思料するのであります(あくまで推測)。


お気づきの点がありましたらいつものように優しくご教示願います。

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