(しつこくてすいません、あくまで私的な備忘録ですからっ!)
平成21年7月9日付 日本公認会計士協会 会計制度委員会研究報告第13号 「我が国の収益認識に関する研究報告(中間報告)」 ケース41はオンライン・ゲーム内におけるポイントの販売収益を取り上げている。ここでいうポイントはアイテム(カードを含む)を買うためのゲーム内通貨(コイン)も含んでいるので、ここではコインと表記する。
中間報告によれば、ソーシャルゲームにおける課金アイテム販売は役務の提供に分類されている。物品販売のような売り切りでなく、ネットワーク上でユーザにアイテムを利用させる継続的な役務ということであろう。
なるほど「その3」における業界側の主張とも密かに合致しているではないか。ならばその会計基準に従って考えてみよう。
コイン購入を経由した有料アイテムの購入は以下のように分解できる。
(ゲーム提供者から見て)
1) コインの販売
2) コインとの引き換えによるアイテム販売
3) ユーザによるアイテム利用開始
4) ユーザによるアイテム利用終了
中間報告によれば、役務の提供が終了するのは4)ユーザによるアイテム利用が終了したときである。
<返品権再論>
ここで経済産業省準則を再掲。
特定商取引法上の返品権が認められるのは「商品」及び「指定権利」の返品であり、役務提供契約については認められていない。これは、役務は一般的には返品が考えられないため (経済産業省 「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」 )役務の提供が終了した後での返品になじまない、ということで特定商取引法上の役務には返品権が認められない。だが、ソーシャルゲームのコインはアイテムの利用権引換権であって、英会話教室のチケットみたいなものだ。さらにコインとアイテムを交換した後でもユーザが当該アイテムを利用し終えるまでは役務の提供が完了していない。
特にユーザの投じた金額が大きい場合には、返品もしくは契約解除について慎重な検討が必要だろう。
<債務不履行>
このように、ソーシャルゲームのコイン及び購入された課金アイテムは、ともにゲーム提供者による役務の提供が終わっておらず、この状態で一方的にユーザのコインやアイテムが利用できないような事態が生じれば、ゲーム提供者の債務不履行である。
もちろん物事には重要性の原則があるわけで、僅少な金額なら「規約承認という事前の合意があった」と言えるだろうが、例えばユーザが数万円を投じて得たアイテムについてゲーム提供者が、規約を盾に自らの債務を履行せずユーザが支払った対価を手中に収めることは正当化できるのだろうか?
<implication>
わかりにくいので少し解説。
課金アイテム購入という取引の性質について、まず単発の物品販売か、継続的な役務の提供かという分類がある。ゲーム提供者側としては、
a)販売後もゲーム管理のため(例えば利用停止等)物品売切りではなくユーザに対して権利を留保したいし、これは、「その3」で指摘したように運営側による「利用許諾(役務提供)」という主張と整合的だ。そして本エントリで見てきたように会計的にも課金アイテム販売は、役務の提供と位置づけられており、ゲーム提供者の考えと一致している。
b)返品に係る規制回避のためにも継続的役務の提供と解釈したいだろう。
このように継続的役務提供説に立つと、役務提供の終了時期はユーザがアイテムを利用し終わったときになる。そうであればゲーム提供者は、
a')ユーザがアイテムを利用し終わるまでユーザに対して管理のための権利を持つだけではなく、本旨に従ってユーザにアイテムを最後まで利用させる債務を負担しており、
b')さらに役務提供が終了していないのに前払金を預る場合(特に金額が大きい場合)の一般的な消費者保護問題も検討する必要があろう。
<付記>
あずさ監査法人による(中間報告)の解説
「業種別収益認識基準の考察 第3回 ゲーム・オンラインビジネス等」 AZ Insight volume 39, 2010 May
※ 2012年2月28日 <implication> 追記
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