2012年3月6日火曜日

年功序列と比較優位(その1)

年功序列。
言わずと知れた日本的経営の要諦で、勤続が長くなるほどに偉くなって給料が上がる仕組み。

典型的には、主任、係長、課長、次長、部長と上がっていき、さらに会社によってはこれらに代理や代行が組み合わされたり、「総務部長」と「総務部 部長」の使い分けがあったりと、外部から(いや内部でも)序列を正確に把握するのはなかなか簡単ではない。
いずれにせよ、これらの役職階段を一段一段上がっていくことは一般的に部下が増えることを意味している。要するに人事管理としてのマネジメント負担が昇進に比例して増大していくわけだ。

すると、一つ疑問が生じる。
「自分は職人で手を動かすのが好きだし、得意だ。人事管理なぞに煩わされたくない。」というエクスパート(専門職)な方々はどうなるのか。比較優位理論によれば、エクスパートはエクスパートに専念した方が会社にとっても日本全体にとってもプラスである。

この対応の一つが、先ほど挙げたように役職を巧妙に使い分けて「部下を持たない」管理職を作ることであり、またオモテの役職とは別にウラの資格で管理する制度である。
ここだけの話、これらはエクスパートのためというよりは、組織内の昇進レースの敗者を優しく包み込む役割の方が大きかったりするのだが、そういうことを公の場で論じてはいけない。
そんなことであれば、堂々とエクスパート制度を作れば良いではないか、と考えるのが自然な流れ。実際、筆者もかつてそう考えて試案を作ったのだ。
いわゆる一般コースでは役職が上がるにつれ給与に占める人事マネジメント相当分が増えていくように、エクスパート・コースでは何らかの業務を人並み以上にこなし(仮に特化業務と呼ぶ)、それが給与の増分を説明する。diversity(多様性)ですからね、これからは!

ところが。
筆者のエクスパート・コース試案は日の目を見ることはなかった。社内で支持を得られなかったのである。しかも意外なことにネガティブなのが経営者サイドよりも、むしろ現場に近い層だった。曰く、

「複数のコースがあるとキャリアプランが混乱し、部下を指導しにくい」
「エクスパートを誰が管理/評価するのか」
「仕事には人事マネジメントの経験と視点が必要である」
「結局、エクスパート・コースは言い訳に使われてしまい、ワークしない」

ハイハイ、皆さんがネガティブなのはわかりました。見送りですね。
どれ一つとっても決定的な理由にはなっていない気がするけれど、とにかく抵抗感は伝わってくる。筆者が思うに、要は、
「みな同じ前提で働くべし」
なんですね。この場合は「全員が同じ人事制度に乗っていなきゃ、やりにくい」と。少なくとも同じ部署や本部の中では。

長くなったので続く(かも)。

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