2011年10月31日月曜日

オリンパス騒動 頑張れ東証(開示編)


WSJ20111029日付「東証社長、オリンパス第三者委の人選を注視)によれば、東京証券取引所の斉藤惇社長は28日の定例記者会見でオリンパスの第三者委員会の設置について「選ばれた委員の多くが経営陣寄りだった場合、株主代表訴訟になる可能性がある」と指摘したという。それはその通りなのだが株主代表訴訟は会社法に基づく一般的な制度なので東証の社長がわざわざ言及するまでもない気がする。東証には資本市場の重要な担い手としての役割を果敢に果たしていただきたいところだ。
東証は(上場審査途中でもない限り)経営について直接調査することは難しいが、上場会社に対して開示という武器がある。常々「コーポレート・ガバナンスは説明責任がキーである」と自説開陳しているわけであるが、実際に適時開示実務はこの説明責任を担保する手段としてけっこう効いている、というのが企業の中の人としての実感である。

ということで今日は開示で考えてみる。
第一に、問題視されている3社の買収で過去の開示が不十分だったのは、東証の開示基準にも原因がある。子会社の異動を伴う事項に関する東証有価証券上場規程第402条第1qによれば、子会社の規模に関するクライテリアとして総資産が親会社の連結純資産の30%、同様に売上高、経常利益、当期純利益、資本金の項目が続く。
今回の問題の買収ではこれらのクライテリアを超えない小規模の会社を選んで非常に高い評価額で買うことによって開示を避けているようだ(注1。再発を防ぐためには、当該子会社への累計投資額も基準に加えれば今回のような開示忌避はできなくなる。東証は、この累計投資額に関連手数料も含めた上でこれが一定額以上の子会社についてはのれんと償却についても開示を義務付けることを検討してはいかだだろうか。

次。
20103月に実施された$620Mという巨額の優先株買取は開示事項に当らないのだろうか。
東証有価証券上場規程第402条第1qによれば「子会社等の異動を伴う株式又は持分の譲渡又は取得その他の子会社等の異動を伴う事項」は直ちに開示しなければならない。重要性のクライテリアは上述の通り。
オ社取締役会で優先株買取が決議されたのは20103月だから直前期の20093月期有価証券報告書を見ると連結純資産は1,687億円。前年の3,678億円からほぼ2,000億円も激しく減少しているのは今般の騒動で問題とされている買収の減損処理が一因だ。1,687億円の30%506億円。優先株の取得価額(値上がり分ではない)である$620M20103月末日のレートで576億円。はい、超えてますね。
しかしこの優先株買取は「ジャイラス社の完全統合を目的とした株主権の買取」ではあったものの、子会社の異動には当らないのでこの規定は該当しない。

それでは東証有価証券上場規程第402条第1r「固定資産の取得」はどうだろう。重要性のクライテリアは同じく連結純資産の30%だからこれも超えている。ところがよく読むとこの固定資産は会計上の定義ではなく法人税法の定義に基づき「固定資産 土地(土地の上に存する権利を含む。)、減価償却資産、電話加入権その他の資産で政令で定めるものをいう」(法人税法第2条第22号)となっており、有価証券である優先株は含まないからこれまた開示対象外。

素晴らしく開示基準を回避しておりますね。まるで最初から狙ったみたいに。

しかし、法には立法趣旨と言うものがある。東証開示規定にしても子会社や実物資産に対する重要な投資が開示対象となるのだから、子会社(Gyrus社)に関連する追加の支出も重要性がある場合には開示されるべきだろう。東証はこの点についても必要な改正を考慮すべきである。

最後。
包括的な定めとして、金商法第166条第2項第8号の「子会社の運営、業務又は財産に関する重要な事実であつて投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの」も開示対象である(会社情報適時開示ガイドブック20116月版)20103月に行われた「ジャイラス社の完全統合を目的」として行われた株主権の買取が$620Mと評価されるほど重要なものであったなら、具体的には前回のエントリで指摘したとおり1)有利な配当付債券と2)重要事項拒否権が$620Mという重要性を持つものであったなら、その買取は「子会社の運営に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの」として開示されるべきだっただろう。更に言えば、それらが200810月にサイドレターで追加的にFAに付与された時点で(ウ氏主張「ウ氏資料」参照)開示されるべきだったのだ。

従って東証は自身の問題として、オ社が開示ルールに違反していた疑いを追及すべきではないだろうか。


2011113日追記
(注1この見方を裏付けるように、WSJ2011111日付「オリンパス買収の3社、当初休眠状態だった 信用調査などで判明」でこれら3社はオ社が投資するまで、ほとんど事業実績がなかったことを報じている。開示回避のためには規模の小さな会社のほうが望ましく、また巨額の投資対象にするためには以前から存在する会社の方が説明しやすい。もっとも3社のうち1社は(手当がつかず?)直前に設立されたようだ。

2011年10月28日金曜日

オリンパス騒動 西部戦線異常あり?

オリンパス騒動のような企業を舞台にした疑惑について、「望ましいのにそうしなかった」、とか「通常はこうするはず」という攻めはあまり意味がない。例えば、
・大きなM&Aには大きなFAや会計事務所を使うことが「望ましい」
FA報酬は「通常は」そんなに高くない
・第三者委員会の結論を得る前に新社長が断定的な発言をしないことが望ましい
などなど。
これらの他者に対する期待は我々日本人にお馴染みの空気を読む文化によって当事者を拘束している間は有効だが、当事者が「いや、これで良いのだ」と開き直ってしまったときには意味をなさない。
この文脈で今般のオリンパス騒動における会社側というか経営陣は、批判を浴びている割には致命的な攻撃を受けることなくうまく持久戦に持ち込んでいる。

攻め手が有効な打撃を与えるには抽象的な空気の話ではなく、「ルール違反」と「ロジック破綻」を攻める必要があるのだ。

前置きが長くなった。オリンパス騒動で疑惑を攻めるならどこだろう?
オ社は20089月に発行された$177M相当の優先株を20103月に$620Mで買い取っており、結果的に$443Mの売却益をFAに与え、同時に$443Mはのれん計上された事実には争いがない。一見過去の買収とは直接関係のない優先株買取の値上がり分支払いがのれんとして認識される理由は、昨日のエントリ「オ社追加情報開示」のとおり「ジャイラス社を当社の100%保有とすることを目的とした株主権の買取りである」からだという。

あれ? 100%子会社にするのは2008年に決定された方針であって、そのためにストックオプションと交換に優先株を発行したはず。2008年の時点で、後に改めて100%支配のために高値で買い取らざるを得なくなるような優先株を発行したのがおかしい、という指摘は報道や各ブログ等でお見かけする。この点に対して予想される経営陣の反論は「いろいろ事情があって現金での支払いを避けるため、債券の働きをする優先株を発行した。現金流出を避けたのはオ社の利益にも適う」だろう。実際、オ社開示でも「10%期待配当の永久価値」と表現されているのでこの優先株には無期限で10%配当が約束されていた。これで議決権がなかったなら(この点については情報がないけれど、そうでないと説明がつかない)、実質は債券だったので100%保有方針と相反するものではなかった、という説明も成り立つ。

ふむ。ならばどうして$177Mの債券相当として発行された優先株が1年半後の20103月に3.5倍の$620Mになったのか。オ社開示資料「ジャイラス社買収(株式オプション買取)の経緯」によれば$177Mの元本が、
1)10%の永久配当で+$265M
2)なんらかのプレミアムで+$178M
の評価によって合計$620Mになったようだ(計算では$632M)。
1)は上述のとおりだが、2)の説明が見当たらない。

ここで参考になるのがウ氏情報。ウ氏資料によれば、2008930日に発行された優先株に対し2008103日オ社サイドレターにてAXAMに重要事項の拒否権を含むGyrusrights of controlを付与したという。また買取価格の交渉においては、重要事項拒否権と大きな配当率によるコントロール・プレミアムが考慮されたという。
ということはオ社資料には直接の記載がないが、オ社が優先株に付した重要事項拒否権というコントロール・プレミアムが短期間の値上がり要因の一つだったことになる。

ところで、思い返せば100%保有方針決定後だったゆえ他社に経営関与させないよう議決権なしの永久配当つき債券ライクな優先株を発行したはずだった。だが、重要事項拒否権は重大な経営関与事項。これを100%保持方針決定後に他社に付与するのは明らかに矛盾する。しかも1年半後にそれを「100%保有とすることを目的とした株主権の買取り」という名目で、しかも3.5倍のお金を払って買い戻すことは到底説明がつかない。
このアレンジは当初から高値での買戻しを意図しており、発案者はその経営関与にまつわる矛盾に気づいていたのかもしれない。だからこそウ氏資料のとおり、当初の優先株式引受契約ではなく3日後のサイドレターでひっそりと隠すように行われ、オ社開示には含まれていないのだろう。

さらにone more thing。ここまでの検討でわかるように、$177Mだったはずの優先株が$620Mに跳ね上がったのは1)配当と2)重要事項拒否権によるコントロール・プレミアムだった。ところでその二つの要因は優先株発行の3日後には成就していた、即ち当該優先株は発行のわずか3日後にはオ社経営陣自らの手によって3.5倍($443M増加)に値上がりしていたのである。もとから$177Mではなく$620Mの優先株を発行したのと同じだ。$177Mのストックオプションと引き換えに$620Mの優先株を渡したのだ。
これらは株主の財産を預かり株主に対して忠実義務を負う取締役の責務からの逸脱だろう。

優先株発行の説明が揺らぐと、その買取に伴ってのれん計上された$443Mの正当性も再検討が迫られるかもしれない。

2011年10月27日木曜日

オリンパス騒動 オ社追加情報開示

昨日26日、会長兼社長だった菊川氏が代表権を返上して一取締役に退いたのに続き、本日オ社から「当社の過去の買収案件に関する追加情報について」(以下「追加情報」)が開示された。基本的に事実経過はウ氏主張をなぞるもの、あるいは既に報道されているもので新味に乏しいという評価もうなずけるが、それでもよく読むとなかなか興味深い点がある。

【ポイント1】
フィナンシャル・アドバイザー(FA)がストラテジックコンサルタントに変わってる

20111019日付 「一連の報道に対する当社の見解について」では問題の巨額手数料支払先について、Gyrus社「買収におけるフィナンシャル・アドバイザー(以下「FA」)への支払いについて」と明確にフィナンシャル・アドバイザーと記載されていたのに対し、追加情報では「ストラテジックコンサルタント」に変わっている。
これは、1)FAとしての手数料が高すぎる、2)FAが対象企業(Gyrus)のストックオプション(後に優先株)を報酬として受け取るのがおかしい、という批判をかわすためと思われる。1)は業務内容がFAとは異なるのでFA報酬の相場を当てはめるのは適切ではない、だから報酬が高くても適切だというロジック。2)は買い手側(オ社)の立場に立つべきFAが買収対象企業のストックオプションを得るのはおかしいという批判を、ストラテジックに共同出資を考えていたというロジックでかわすものだ。

そうすると「じゃFAがいなかったのか!」とのツッコミが想定されるため「(Axes社への支払いは)一般的ないわゆるFA業務に対する報酬のみに留まらず」と記載することによってFAを兼ねていたこともさりげなく主張している。

うーん、考えましたね。

【ポイント2】
FA手数料が$687Mではなく$244Mであり過大とは言えない点を強調し、優先株買取の値上がり分$433Mはのれんに計上

これはまさに前回のエントリ「疑問編2 FA手数料高い?」で指摘していた問題。
今まで明確にしていなかった優先株買取と手数料の関係について、優先株を買い取った$620Mのうち取得相当額の$177Mを引いた値上がり分$443Mは手数料ではない!と明確に主張。これによって手数料は$244Mでなんとか説明できる範囲に抑えたものの(それでも高いですが、FA業務に留まりませんので。はは。)、その反射的効果として値上がり分$443M の支払いはGyrus社買収と直接関係ないトランザクションとなり、Gyrus社買収に係るのれんに計上することはできなくなる、、、はずだったが、「買取金額620百万米ドルと発行価格177百万米ドルとの差額については、ジャイラス社を当社の100%保有とすることを目的とした株主権の買取りであるので、のれんに計上しております。」だそうだ。

うーん、考えましたね(再)。
なかなかしっかり攻めどころを見抜いて守備強化しております。
これに対してどう攻めるか、は次回ということで。

2011年10月25日火曜日

オリンパス騒動 疑問編2 FA手数料高い?

Gyrus社買収に関してファイナンシャルアドバイザー(FA)に支払われた手数料は〆て$687M

ウ氏資料内でも指摘されているとおり、こうしたM&A案件の手数料は「高くても」買収金額の1%。ちなみに私が仕事で関わった国内案件では、けっこう手間と時間がかかったものでも手数料は1%の半分をだいぶ下回っている(私が値切ったのだが)。2000億円というGyrus社の案件であれば1%20億円が上限だったはずだが、実際に支払われたのは$687M(20103月末の為替レートで換算して約639億円)だから、世間の相場上限の約30倍だ(私の相場だとほぼ100倍ですけど)。
従ってこの手数料額は一般的な許容範囲を超えている、と言えるだろう。

ではこの尋常でない額の手数料を支払った経営陣の責任を追及するとどうなるだろうか?
オ社経営陣は「一連の報道に対する当社の見解について」$687Mのうち$443Mは報酬として発行したストックオプション(後に優先株に差替え)$177Mの値上がり分だから報酬額は$244Mだと主張しているようだ。もっともウ氏資料の経緯を見る限りワラント買取の$500Mもストックオプションの$177Mに由来するようなので、そうだとすると手数料は減少して$194Mとなり、むしろウ氏説の方がオ社経営陣にとって望ましい説明のような気がする(2日前のエントリ「オリンパス騒動 まずは経緯の整理」参照)。この$194Mだと買収金額の約10%となり相場の1%よりはるかに高いとは言え、$687M30%超に比べるとなんとなく優しい気分になって攻める気が薄れてしまうのが不思議だ。

仮に公の場で議論したとき、「1%という数字はあくまで相場であって、基準やルールがあるわけではない。10%でも経営陣がそれだけの価値があると判断したのだ」と言い張られたら、法的な責任をそれ以上追及するのは難しいかもしれない。
だが、オ社株主は自ら選任した取締役が大事な会社資産をムダにしなかったか、について立証の必要はなく是か非かを判断するだけで良い。その判断のためには必要な情報と説明を要求するべきで、報道によれば既に海外の大株主がそのような要請を始めているようだ(20111021日付Bloomberg記事)。もし非と判断する株主が多数派になれば経営陣の将来の再任を否決するか、さらに任期途中で解任する選択肢もある。ここでいう多数派は株主の頭数ではなく持株数で決まるのが資本多数決である。

ならば成功報酬としてストックオプションをFAに付与し($177M)、後に4倍近い金額($670M)で買い戻したことに問題はないのか、次回に乞うご期待。

【追記】なぜストックオプション?
次回で書くつもりだったけれど、FAの報酬を対象会社のストックオプションで払うのは珍しい。しかも契約書上で成功報酬の85%、実際には90%を超える極めて高い割合だったからなおさら疑問だ。受け取る側のFAだって、ふつう現金を好むでしょ? わざわざこんなことをするのは手数料が過大になるのを防ぎつつ別名目で資金を動かせるように、これらのストックオプション(後にワラント、優先株)に値上がりの余地を残し後に高値での買戻しを当初から意図していたのかもしれない。
だとすれば、オ社経営陣は最終的にオ社が買い戻した値上がり分の$443M(ワラントを含めれば$493M)については、もう少し声高に「報酬ではない!」と主張するのが道理だが、「一連の報道に対する当社の見解について」における記載は心なしか控えめだ。

オリンパス騒動 まずは経緯の整理 FA報酬> 経緯 2010331 にあるとおり、この買戻しで$435Mがのれんに計上された、とウ氏は指摘している。それが事実であれば、まったくの推測だが、この$443Mという巨大な金額が当期(買戻しを行った20103月期)の損失になることを避けるため、のれん計上が必要で、そのためにはこれが当該M&Aにかかる手数料であると説明する必要があった。皮肉にもそれは当初このスキームが目指した、値上がりしたストックオプション(後のワラント、優先株)の買戻しによる資金移動は過去の買収手数料とは関係ないという建て付けと矛盾するものだった。ということなのかもしれない。

2011年10月24日月曜日

オリンパス騒動 疑問編1 CEO?


「疑問編」と言っても色々あり過ぎてどこから手をつけて良いかわからないが、意表をついてCEOChief Executive Officer;最高経営責任者)の件から始めよう。

ウ氏がオ社取締役会で代表取締役・社長執行役員を解職されたのは同社プレスリリース(「代表取締役の異動に関するお知らせ」)のとおりだが、ここで気になるのはウ氏が菊川氏にあてた手紙(ウ氏資料)の中で「私がCEOに任命されたことが日本語ウェブサイトでは公表されていない」と指摘していることだ。企業ウェブサイトの日本語と英語で情報量に差があることは珍しくないけれど、CEOタイトルのような重要なことについて違いがあるはずはないと思って同社ウェブページ英語版BOARD OF DIRECTORS, CORPORATE AUDITORS AND EXECTUTIVE OFFICERS (As of June 29, 2011)をチェックすると、確かにChairman & CEO Tsuyoshi Kikukawa, President & COO Michael C. Woodfordと書いてある。本年6月の株主総会後新役員体制発足時点では菊川氏がCEO、ウ氏がCOOだったわけだ。英語では。それに対応する日本語版(というのもへんだが)20113月期有価証券報告書を見るとCEO, COOの記載はない。それならとウ氏解任決議プレスリリース英語版を探してみると、なんとこちらにはウ氏解任前の役職として ”Representative Director, President and Chief Executive Officer”と記載されているではないか。ということは、

CEO,COOの役職を英語版では公表し、日本語版では公表していない
・本年629日時点では菊川氏がCEOだったが、1014日以前のどこかでウ氏がCEOに昇格していた(ただし英語版)

これを裏付けるように前述のFinancial Times記事(Ex-Olympus chief questioned payments)には「わずか2週間前にchief executiveになったばかり」という記述がある。ということは、ウ氏は本年101日前後に菊川氏に代わってオ社CEOに昇格した直後の1014日に突然解任されたことになる。
だとすればウ氏解任プレスリリースが挙げている「マイケル・シー・ウッドフォード氏と他の経営陣の間にて、経営の方向性・手法に関して大きな乖離が生じ」という解任理由は説得力に欠けると言わざるを得ない。仮にそのような解任理由が本当だとすれば逆に2週間前にCEOに任命した側の責任を問われることになるだろう。

【疑問】CEO任命と直後の解任の責任
任命責任。政治の世界でよく耳にするが、政治の世界でそうであるように攻める力は強くない。そのような混乱を招いた取締役たちを株主が信任し続けるかどうか、に尽きる。

【疑問】CEO任命を日本語で開示していない
こんなに大事な決定事実を速やかに開示しないとは問題ですね、東証が黙っていませんよ、と思って東証の開示ルールを紐解いてみた。上場規程402条第1aaによれば「代表取締役又は代表執行役の異動」についての決定があった場合には直ちにその内容を開示することが義務付けられているものの、最高経営責任者については「代表取締役等の異動に該当しないときでも、開示することが望まれます」(会社情報適時開示ガイドブック20116月版)と腰の引けた努力義務になっていた。なるほどこれではルール違反を問うことはできないが、いずれにせよ日本語と英語で開示内容が異なる点は要改善であろう。