2010年12月6日月曜日

コンテンツへの対価支払システムとしての広告 その4

2005年から2009年にかけての広告費の推移をもう少し詳しく見てみよう(注1)。

 20052009増減
総広告費68,23559,222-13.2%
    
新 聞10,3776,739-35.1%
雑 誌4,8423,034-37.3%
ラジオ1,7781,370-22.9%
テレビ20,41117,139-16.0%
マスコミ四媒体広告費37,40828,282-24.4%
    
インターネット広告費3,7777,06987.2%


一見して明らかなのは新聞・雑誌の急激な落ち込みで、それぞれ35.1%,37.3%と5年間で3分の1以上を失っている。それに対して最も規模の大きなテレビは相対的に落ち込みが少なく、16.0%の減少にとどまっている(それでも絶対額としては3,272億円の減少)。新聞・雑誌はテレビの2倍以上、減少しているのである。
なぜこれほど新聞・雑誌とテレビで差がつくのか。

これまでの考察を当てはめれば、視聴者のeyeballは従来メディアからネットに移行し、広告もそれを追いかけてネットに移行した。
もともと視聴者の属性を何らかの点(例えば趣味嗜好、居住地域等)でカテゴライズし絞り込んでいたのが強みだった新聞・雑誌広告はネット広告、特にネット検索広告と競合し、かなりの部分が代替された。しかしネット広告及びネット検索広告は既に述べてきたようにマスに対するリーチは不得手で、この点で優位性を保っているテレビは視聴率を落としながらも「他に代替策がない」という理由でマス向けの広告を引きつけ続けている。

ちなみにインターネット広告費7,069億円のうち、検索連動広告費は1,934億円(PC:1,710億円,モバイル:224億円)であって、実は3割にも満たない。ということは現時点において日本では「絞り込まれたユーザ」を対象とする雑誌・新聞広告、ネット検索広告の規模は広告費全体に比べて小さく、また雑誌・新聞からネット検索広告への移行は一段落している。

【本日の結論】
広告費の大部分は(意外にも)マスへの訴求、認知獲得を目指しており、影響力を落としていると言われるテレビしかその役割を果たせないため、広告主は消極的にテレビを選択するか、広告を控えるかのいずれかである。
だとすれば広告主は現状に大きなフラストレーションを抱えているのではないだろうか。

※2011/03/08 追記
3月2日、佐々木俊尚さん( @sasakitoshinao )がツイッターでうまく表現しているので引用。
いまのネット広告は消費のパッションを生まず、消費を刈り取るだけ。だからテレビCMをまだ超えられないんだよね


【注】
(注1) 電通(2010年2月22日付プレスリリース)