2010年9月24日金曜日

モジュール化とインテグラル アップルの戦略 その2

パソコンにおけるアップルの浮沈は既に歴史の一部であり、現在のネットユーザ及びアップルユーザに等しく体験として共有されているわけではないと思うので、引用でおさらい。

「一九八〇年代半ばから後半にかけて、同社のマッキントッシュはパソコン業界で技術的に傑出した製品になっていた。しかし、アップルコンピュータは、マッキントッシュの主な優位性がハードとソフトのパッケージではなく、OSにあることを自覚していなかった。その結果、同社はその傑出したOSを低品質のハードウェアと一括して垂直/統合構造に組み込んでしまったのだ。(中略)結局、マッキントッシュOSはハードウェアが足かせとなり、モジュール化の進展とパソコン市場の競争激化に対応できなかったのである。」

チャールズ・ファイン 小幡照雄訳「サプライチェーン・デザイン」日経BP 1999, P74

2010年9月19日日曜日

モジュール化とインテグラル アップルの戦略

「現在の状況は、アップルとマイクロソフトがパソコンの覇権競争を繰り返した一九八〇年代に似ている。 (中略) それは(引用者注:アップルは)マッキントッシュなどの優れた製品を生み出した八〇年代と同じ囲い込み戦略を使っている。それに立ち向かうグーグルとインテルはオープンプラットフォーム方式で戦いを挑んでいる。もちろんアップルは賢い企業なので、ウィンテル時代と同じ失敗はしないだろう。」(*1)

1980~90年代に独自路線を貫いたアップルは典型的なモジュール・アーキテクチャのPCに破れ、それ以降ICT業界ではモジュール化、オープン化が金科玉条となっている(ICT業界以外でもモジュール化が当然に進行するのかは興味深い論点だがここでは触れない)。

しかし。2010年現在、アップルはiPod, iPhone, iPadで世界中を席巻している。これらのプロダクトはハード、ソフト、さらにはネット上のアプリケーション/コンテンツであるiTunesが統合されている。
このような統合化=インテグラル・アーキテクチャは、ICT産業の定理に反するものであり、やがて消えていくのか? そうでないならば、即ち小池が言うようにアップルが「同じ失敗はしない」のであれば、ICTのモジュール化神話が崩れるのか?

iPad新発売、iPhone4リリース、iPod新型発売とアップル絶好調のこの時期に、世論の逆風を省みずあえてアップルのインテグラル戦略を考える。

(買ったばかりのiPadを傍らに。でもこの文章はPCで書いてます)

*1 小池良次「クラウド」 インプレスR&D 2009,p263

2010年9月18日土曜日

追憶

10年前に転職した頃、世の中(の一部)はIT革命の騒乱状態で、自分もそこに参加しようと決意して実際何をするのかと考えたとき、HP制作とかネット広告代理店とかネット通販は「ちょっと違うな」と。
実際のところ短期間はそれらで生計を立てて行けた(才覚の問題ではなくそういう時代だった)と思うだけれども、IT革命ってのはもっとすごくて、なにかこう社会を変えるものだろ、みたいな。

かんじんのアプリケーション/コンテンツについては、当時からインターネットは無料の世界でビジネスが難しいってことは指摘されいて、とにかく人を集めて広告に結び付けるしかない。でもそこに個人的に疑問と不安を持っていたので、ひとまずICT業界でインフラのブロードバンド化にささやかながら尽力することに。これはある程度の成果があったと自己評価。

10年たった現在、「ネットビジネスの収益は広告頼み」という構図はさして変わっていないどころか、むしろグーグルの予想もしなかった進化、即ち検索と広告の融合によってグーグルを中心としたエコシステムができあがっている。
それが悪いわけじゃないけど、もう少しネット上のビジネスモデルに多様性が欲しい気はする。既に脱検索、脱グーグルの動きはアップルを初めとして活発になり始めている。

10年たって改めて思う。
まだまだネットを使ってもっと面白いこと、すごいことができるはず。社会を良い方に変えることもできるはず。「良い方」という規範の問題を持ち出すと話が大きくなりすぎて収拾がつかなくなるけど、それでも考える価値はあると思うし、取り組み続けている人ももたくさんいますね。

始動

先週iPadを買ってツイッターを始めた。
今日からは晴れてブロガーだ!

やっぱりネットを語るなら少しは自分でやらないとね(実はICT業界だったり。良いのかそれで)。特に理由はないがグーグルのお世話に。岸博幸さんに「アメリカ帝国主義の片棒を担ぐのかっ」って怒られそう。いや、知り合いではありません。アメリカ当局に読まれても良い内容で。